西川敦子
本藍染
by ATSUKO NISHIKAWA
本藍染 ワークショップ + カフェ
「ハナのつむじ」主宰
ウエダ家との出会いが、
古来から受け継がれてきた
藍の発酵に変革を
もたらすことができた。
「本藍染」は、化学染料や化学合成された
還元剤を用いた藍染と区別され、
日本古来の藍染の技法で染めることである。
西川さんは、藍染を早く発酵させたり色を出す
という結果を得るため、人間の都合で加温したり、
菌の餌に砂糖を入れて無理やり発酵を
促進させたりすることにもともと疑問があった。
COBOLab.の講座に通い、
その疑問を解決する手立てに出会った。
ATSUKO NISHIKAWA
LEVEL2 INDIGO
PRESENTATION
2019 COBO Lab.
日本の寒仕込みを進化させたCOBOの乳酸発酵
システムを0ベースから取り入れたところ、霧が
晴れるようにいままでの藍の発酵に対する疑問が
解けたのだ。自分なりの藍の発酵を試行錯誤して
いく過程で、奈良時代から生きつづけると言われ、
昭和30年に国の重要無形文化財の指定を受けた
「栗駒正藍染」と自分のやり方が非常に
似ている点があることを発見した。
ウエダ家に出会ったのは、
乳酸菌をパン種にしたパン作り
講座に参加したことだった。
西川さんのカフェ " ハナのつむじ " では、
ウエダ家の乳酸菌はパン種になったり、
カフェごはんにも活躍しています。付け足す
調味料の押し付けがましい味ではなく、
木綿生地に触れるような柔らかく、風土で育った
素材のヒストリーが口の中で展開していきます。
乳酸菌は縁の下の力持ち。目に見えないところで、
とても大きな仕事をしてくれています。カフェの
お米やスコーンを「すごく美味しい」と言って
くださるお客様が多いが調理法は至って簡単!
普通ではないのは乳酸菌が働いてくれることです。
ガンジーが教えてくれた自立の
精神と自分のデリケートな肌を守り
いたわるために。藍に対しての
独特の向き合い方が功を奏した。
西川さんは、もともとアレルギー体質を持ち、
都会の環境が肌に合わず、海辺の自然環境の
良い場所では体調がよくなるという経験から、
伊豆という環境に居を構えた。
食だけでなく衣食住すべてを自給自足することで
何者にも支配されず自由に生きることができると
説いたガンジーの「自立の思想」に出会った
ことがいまの自分をつくっていると言う。
ガンジーは自分の手足を正しく使ってすべての
生命・自然との共存をはかることで支配による
苦しみの世界を変えようとしました。
化学繊維や絹や麻はデリケートな自分の肌には
合わず、子供の頃から木綿の柔らかな肌触りに
守られてきた。西川さんは木綿の糸を紡ぎはじめ、
自分にとって大事な木綿をアップグレードする
藍染の世界へ入り、いまの営みにつながっている。
ウエダ家の自然哲学である「菌の気持ちになって
考える、伝統の常識にとらわれずに
ゼロベースから見直し、再構築する」は
目からウロコで、藍の発酵が進化している。
「藍と食、菌との共存がベースにあるので、
安心して暮らし、チャレンジできるように思う。」
と西川さんは言います。
私たちはいまチャットGPTなど生成AIと呼ばれる
人工知能の膨大なデータによって操作され、
個人が主体的に自律した意思決定していく
原則が揺らいでいます。
自然の生きものたちと関係しながら
自立していく、互恵関係を問いかける
ガンジーの「自立の思想」が蘇ってきます。
伊豆の地で、自然と人の媒介役である
菌の視点から藍染の発酵に向き合い、
自然や地域、社会との関係性を主体的に
築いていくことで、衣食住の自立を取り戻したい。
「知恵と実践」のリトルデータを
積み重ねる営みを世界に発信します。